Lin, Su, Xin & Song, 2024 中国福建省武夷山の Lucanus qizhihaoi 新種記載

Lucanus qizhihaoi, a new stag beetle from Wuyishan National Park of Fujian, China (Coleoptera: Lucanidae: Lucaninae)

  • XIN LIN
  • RONG-XIANG SU
  • FEI-YI XIN
  • ZHI-YU LIAO
  • HUANG-HUI LU
  • XIAN-ZHOU LIU
  • HAI-TIAN SONG

Zootaxa,  Vol. 5541 No. 2: 26 Nov. 2024

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Lucanus qizhihaoi Lin, Su, Xin & Song, sp. nov.

斉氏深山鍬甲
チーヂーハオミヤマ

この新種は、中国本土およびインドシナ北部に分布するlucanus boileauiグループに属し、その分布の最東端に生息する種となる。
形態学的特徴、ミトコンドリアマーカーCOI、および地理的隔離から、近縁のLucanus boileaui Planet, 1897と明確に区別できるとした。

ホロタイプは、小型のオス。

パラタイプは、1♂の、なんと「頭部」のみ。

 

ボワローミヤマとの区別点は、188ページに10点、記載されているのだけど、
明確なところでは、

1)大顎が比較的直線的な傾向がある

4)頭部の前方隆起が中央で盛り上がっている

 

5)全ての脛節内側は橙黄色

 

いずれにしても、たった2個体での分析。

なので、各部の比較検討は十分ではない点は筆者によって謙虚に記されている。
追加個体が待ち遠しい!

2023年10月2日、ハイキングをしていたXin Linさんらが、Xianglushan香炉山の標高1900mの頂付近でこの種の死骸を拾い、頭部のみを持ち帰ったのが、パラタイプとなっている。

翌年2024年7月13-14の同地での調査において、瀕死の1♂が岩の上にてひなたぼっこしているのを発見、採集したが、確認されたのはその1♂のみとなっている。よってそれがホロタイプとなった。
ライトトラップでは成果が上がらず、走光性があるかは未だ不明。
山頂付近にて飛翔個体も確認するも、捕獲に至らなかったようだ。

命名については、ホロタイプ標本を採集した、福建省武夷山市の若手研究者のZhi-Hao Qi(ヂーハオ・チー)さんにちなむ。

 

***

まず、ホロタイプ(1頭)、パラタイプ(頭のみ)で新種記載した勇気。

そして若手研究者らしく?自分たちの写真を載せている点は、ご愛敬だね。

それを良しとした査読の方たちの寛容さに拍手!

 

しかし、ハイキングでのNewFaceとの邂逅は、さぞエキサイティングなものだっただろう!!!

 

末尾に書いているが、ボワローミヤマの分布は、中国での研究では四川省のみになっている。

実際中国でのLucanus属研究において、藤田氏の大図鑑(2010)で書かれた広範な分布域に対しては疑義が出されており、この論文でも、ボワローの分布を四川省のものに限定したことに対して、但し書きが入れられている。(197ページ)

それについて私は、ビークワ75号(16ページ)で分布域を「四川省西部」と修正したように、同じように考えている。

90年代から2000年にかけて出回った中国由来の標本に付けられたデータは、残念ながら、おそらくはその殆どがフェイクな可能性が高い。

シセンミヤマL. fairmaireiとか武夷山にいると思う????、チョウセンミヤマ系やボワローも。ん~最近出てこなくない?ってことは?
一昔前は、中国のクワガタと言えばなんでも「福建」「武夷山」ってのが定番だったわけなんだけどさ、こう出そろってくると、あれれれ?って。やっぱそこにいなくない?ってのが、現状です。はい。

自分も山ほどそんなパッキングが入ったタッパーが積んであります。どうしようか!

仮に、ポジティブに希望をもって、四川省のじゃないラベルのボワローを見てみたとき、
以下のような特徴があるとしたら、今回の新種である可能性が高いわけで!(しかもずっと昔に採られてるじゃん!!!)なのだが、ぱっとみた感じ、そんなうまいことはないな~って感じだ。

もれなく、脛節はオレンジブラックのツートンで、
額はピッタンコ平ら、(新種じゃない)なんですw

今回の新種に特徴として、

日本の深山のように額が隆起する点が、いちばん興味深い点に思うし、
脛節が縁取りなく橙黄色になる点もおもしろいなあ~と感じる。

 

チーヂーハオイ、

チーヂーハオミヤマ、

チーミヤマ、

なんて呼びましょうかね。

 

ちなみに、

ビークワの切り抜きにも書いてあるけど、ボワローの原記載時のつづりの「v」は、けっして「誤記」ではないのでその点は注意。

本論文において、195ページのボワローへ言及している際、括弧にわざわざ「誤記」と書いているのですが、その点について補足です。

 

あまたの歴史資料を見てもらえば一目瞭然なのだけどね、近世までラテン語の慣習で「u」は「v」で表記していたので、記載者のプラネットはボワローミヤマ記載時に、いわゆる古めかしく「v」にしただけであって、誤りではないんです。「u」と扱いは同じなので。でもまあ、そういう格好つけは紛らわしいから、いらないってことなんですけどw

プラネットさんは、日本ミヤマの分類話でもそうなんだけど(私が書きましたビークワ92号日本のミヤマクワガタ特集号、104-109ページ参照)まあ、面倒な方ですよね~

 例)17世紀のフランスの文学者ニコラ・ボワロー・デプレオの版画

 

Author: jinlabo

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