年明けてから乾燥させていた標本を整理。
自分に限っては、欠けとかパーツ外れとか、標本の「状態」はあまり気にせず収集しています。なので展足に際して、乾燥させて、はいおしまい!と済むということは少ない。
つまり、たいてい箱に入れる前には、欠損やパーツはずれのケア、すなわち修理をほぼ手がけているわけです。
ここでは、パーツはずれの修理の一例を、先日のをネタに見ていきましょう。
パッキング内で外れたパーツは、展足時は別にしておきます。展足時に接着したり、直したりはしません。
つまり、本体の乾燥時は、パーツはペットボトルの蓋に入れて、本体とセットで管理しておきます。
そして、乾燥後に、接着などの補修にかかる、という流れです。
乾燥させる際の符節の角度とか見越してはずれたパーツの形を整える場合は、カット綿の上で固定するなど、状況に応じてあれこれやりますけど、基本的にペットボトルの蓋(笑
「いろはす」や「天然水」といった、コカコーラ系列の蓋だと、高さがなく薄く、かつ黄緑や白といったパーツが見やすい色のヴァリエーションがあって管理しやすいですね。
綿の上に出すと、以下のような感じ。ゲニタリア(交尾器)も一緒に。
パッキングが雑に扱われた場合、こうして末端が破損してバラバラな個体は少なくないと思います。
個人的に、片側の爪はずれはちょっと苦手!
なぜなら、ピンセットで飛ばしてしまうから・・・毎回そうなるの分かっているのだけど、集中すると、たいてい繰り返してしまう愚行。
すぽっと、両爪抜けのほうが楽です。
あと、見過ごしてしまうのは、符節の付け根にある棘はずれ。
ともすれば捨ててしまいそうだけど、なるべく直したいですよね。
あと、符節はずれも、爪から第1節目がはずれた場合、その上から途中の2~4節から折れた場合、符節の根元の球状の関節ごと符節全体がはずれた場合、などバリエーションがありますが・・・、その対処については別の機会に譲りましょう。
さて、修理におけるポイントを少々。
符節の修理も、接着面を少し加工することで接合しやすくなります。関節のふくれた部分を少し削ると、接続側の関節の穴に入りやすくなり、接着時のミスを防ぐことができます。
そのための、接着前の仮合わせは必須ですね。
その際、ピンセットで摘まんだりするわけですが、ピンセットで挟む部位が関節に当たる場合は要注意。
力が入りすぎると、挟んでる関節を不本意にも切断してしまいます。
継ぎ合わせる作業が増えてしまう、という悪循環に。ここはくれぐれも注意してください。
そして、パーツ同士の接着は一発でクリアを目指します!
小さいパーツはアロンアルファなどの瞬間接着剤を用いるのがベストと考えますが、その場合、一発で接着できないと具合が悪くなります。なぜか?
接着しなくなる!
乾いた接着剤、つまり塗面をいったん剥離して、まっさらにしないとだめになるのです。
その際に、パーツ自体を壊してしまうことも多く・・・
一続きだった符節が、関節ごとに3個も4個も、さらには爪までももばらばらになったら、もう泣くしかない・・・。
そういう経験もしないと分からないかと思いますが、大事な標本に限ってってのがあるので、ほどほどの標本で訓練することをおすすめします。
最中の写真、撮ってないですが、ばらばらのパーツの主は下の写真の真ん中の個体、フォントミヤマでした。
これらは基産地である福建省産の個体。
左のフォントは、頭外れ。
頭外れは、ミヤマにそこそこ多い修理案件ですが、直すのはとてもカンタン。
胴の側に速乾の木工用ボンドを少量塗って、接着します。
頭を押し込んだ際、ボンドが溢れ出さない量がベスト。
溢れ出た分は、すぐに針の先端などで取り除いておきましょう。瞬間ではないとはいえ、速乾ですから。
フォントミヤマは、福建省Fujianが基産地だけど、浙江省Zhejiangや、昨年は安徽省Anhuiからもたらされています。
かたちは地味なのだけれども、体長アベレージに変化があったりと正直想像を超える意味が分からないミヤマなので、注目しています。
来期は数が来そう。
雲南省のヴィクトリウスも2020年はだいぶ安価に、状態で選べるほど数が流通しました。
ちょっと前までは入手経路は標本商しか知らないような種だったのですが、SNSの交流が状況を激変させました。
そうとはいえ、70mmクラスの大型はそう多くない印象。
個体差は微妙ですが、顎の長さや湾曲、頭楯の広がりに個性が出るので、面白い種です。
この個体は、ビークワで図示したものより大きく、良い型でした。
ヴィクトリーな「V」字型の非常に特徴的な頭楯をもつヴィクトリウスですが、その頭楯はチェンミヤマのように、直上に跳ね上がりません。
緩やかに前方へとせり出し、尖らないかたちを見せます。
頭部やボディはルニフェルにそっくり。ですが顎に関しては、えぐい顎先の開きのルニフェルに対して、ヴィクトリウスは非常にマイルド。
どこか、メアレーとロンドの見た目の関係性を見ているかのよう。
アクベスとユダイクスとか、こういう関係性はじつに興味深い。
そんなメアレーたちの仲間のなかで、えぐさの極地を体現する「鬼深山」こと、ヴェムケン。
先の記事の個体たちですが~展足すると、また印象が変わりますね。
インド産と、違うのか、、、
はっきり言って、よく分かりません。
気持ち、根元のボーリンな歯が、インドのは直上に跳ね上がる印象があって、チベットのは、前方へ伸びる気がします、が、単なる個体差、なの??
とりあえず、以上、針外しからの修理についてのあれこれでした。
みなさまも本年もいい標本ライフを!