永田善久
「ヨーロッパミヤマクワガタのドイツ神話学」
『思想』 5月号(No. 1057)
2012年 岩波書店
140-170頁.
-Japanese only.
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ドイツ文学者である永田先生の、ヨーロッパミヤマをめぐるあれこれをつづった論考。
ミヤマに興味ある人は読まなければならない論文。
とにかく、
Lucanus cervusを、ラテン語読みで「ケルウス」と呼称することが、まず、かっこいい。
周知のように、一般的に、ヨーロッパミヤマは、「ケルブス」と呼ばれる。
もちろん、「ブス」だとかっこわるいので、
気持ち的に、「ウ」に点々の、「ヴス」と表記にしたいところ。
もっとも、私の場合は、今は亡き葛さんがフランス的に「セルヴス」と呼んでたのにならってそう呼称していたのだけれども、この論文を読んで以来、ケルウスと呼ぶことにしました。笑
本論は、以下のような構成。
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はじめに
1.ケルウスとグリム童話
2.ケルウスの分類学、分布、形態学、語源学
3.ケルウスの生態学と民俗学―『ドイツ神話学』の中のケルウス
4.ケルウスをめぐるポエジー
5.現代ドイツにおけるケルウスの法的保護と日本での取り扱い
6.日本におけるクワガタムシ受容
おわりに
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タローニ氏の図録を、ドイツ語圏へシフトして文字起こした的な内容ですが、文学者ならではの切り口は、好奇心をくすぐるに十分すぎます。
デューラーに由来するこの水彩画に描かれたケルウス。
”北方ルネサンス”、まさにドイツ語圏で、500年前に画家の眼で捉えられ活き活きと描かれたこの虫は、今も変わらずに、ワールドワイドに我々を楽しませてくれるんですね。