休日の終わりとともに、夏のはじまり~立夏です。
好天に恵まれても控えめにしか外出できない苦しさは、いったいなんなのか。
ただただ気だるくなる黄金週間でした。
晴天を横目に、インドアな展足作業にいそしんでるコレクターも多いのではないでしょうか??
一方で、ツイッターを見れば、なにやらミヤマも出始めているもよう。
夏は近い!
チベットのアトラトゥス sp. atratus Hope, 1831
こういうPseudolucanusプセウドルカヌス系はミヤマ特有の重量感をめいっぱい体現していて、すらっとして華奢なEolucanusエオルカヌス系とはまた違う感じ。個人的に大好きです。
ここで「プセウドルカヌス」「エオルカヌス」について、簡単に書いておきますね。
Eolucanus エオルカヌス属
今回のビークワにおいては、冒頭7-8ページの緑枠内のグラキリスミヤマグループとされている種、つまり、グラキリス、オーベルチュール、パン、カーリー、アディ、プロメテウス、ミンイ、ダヴィディス、レスネのことです。
「ミヤマ特集」としてわかりやすさを目指すため、エオルカヌスはルカヌスに統合しています。
和名も「~ミヤマ」としますしね。
が、基本的にエオルカヌスは、ルカヌスとは分けて考えたほうがいいかな~と思っています。Noseolucanus「ゲンシミヤマ属」のように。
かつて、黒沢先生がグラキリスミヤマを用いて「亜属」を設け、そののち、菊田氏が「属」として独立させました。
Genus Lucnaus subgenus Eolucanus Kurosawa, 1970 (Type species: Lucanus gracilis Albers, 1889)
Kurosawa, Y., 1970, The Stag-beetles collected by the Lepidopterological Research Expedition to Nepal Himalaya in 1963. Special Bulletin of the Lepidopterological Society of Japan, 4, 159-167.
Genus Eolucanus Kikuta, 1986
Kikuta, T., 1986, On the higher taxa of the stag beetle family Lucanidae. Special Bulletin of the Japanese Society of Coleopterology, 2, 131-138.
エオ[Eo-]とは、「太古の、原初の」の意。
ここらへんの基本的事項は、Huang & Chen (2010), 189-196において詳しいので、気になる方はぜひ参照してください。
エオルカヌスの♀は、ルカヌスの♀と比べて顔つきが全く異なるので、ぜひそこを観察してみてください♪
具体的には、顎の内歯が発達せずスラっとしている、胸部が細く腹部が大きい、ケイ節は基本的にノコギリ状であまり発達しない、などが特徴です。
あと実際に展足するとわかるのだけれども、鞘羽が薄い点など、ボディの組成の上でもルカヌスとは異質な感じがします。オニクワガタPrismognathusの類の質感といったところ、といいましょうか。
ブリード方面ではどうでしょうか。おそらく違う点がいろいろあるのだろうと想像します!
Pseudolucanus プセウドルカヌス属
一方で、プセウドルカヌスは「丸っこい奴ら」のくくりと捉えて、ルカヌスへ統合して問題ないかなと。
Genus Pseudolucanus Hope & Wentwood, 1845 (Type species: Scarabaeus capreolus Linnaeus, 1758)
Hope, F. W. & Westwood, J. Q., 1845, A catalogue of the lucanoid Coleoptera in the collection of the Rev. F. W. Hope, M. A., F. R. S., & C. together with the descriptions of the new species therein contained. London, 31 pp.
元来、HopeとWestwoodが、北米のカプレオルスミヤマを用いて設けた「属」でした。
プセウド[Pseudo-]とは、「偽(ニセ)の-」の意。
スペインのバルバロッサは、プセウドルカヌスの代表といっても過言ではありませんし、インドに分布するコンフサスや、ウィットマー、トルコのブシグニーもプセウドルカヌスで名付けられた種ですね。
欧州の研究者のなかでは、確かに古くより認識されてきた「属」なのです。
今回は、北米のミヤマは独立して扱ったため、北米種をもとにした「プセウドルカヌス」の枠組みにとらわれずに、まとめた次第です。
それらの丸っこい系統を「ヨーロッパミヤマグループ」として一緒にする分け方は今回が初めてですが、ひとまず、♀の形態を根拠としてエオルカヌス系との明確な区別をつける分類になっている、と理解していただければと。
全体のバランスと紙面を考慮した、いわば構成上の問題ですね。
ゆえに、ざっくりとしたグループ分けになっているしだいです。
とはいえ、こやつらプセウドルカヌス系の♀、今回図示できておりますが~レアです。
国産ミヤマでわかるように、♀って、当たると山のようにたくさん採れるじゃないですか。
だからかは定かではないですが、現地では♀目当てで採ってくれることはまれで、流通に乗ることもほとんどありません。
まあ、虫は、自己採集が基本ということですね~
ああ、ヒマラヤでトレッキングしたい!
しかし、今年は海外はどんな感じになるか、おおよそ検討がつかない感じ。
海外から「今年も大手町で会おう」などとメール来ますけど~、
東京の状況を見る限りでは危ないよなあ。
海外や地方からわざわざ東京へ出向いてウイルスを運ぶことこそ、最も憂慮すべき事態なわけだから困ったもんですね。
ではでは。
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