おれ流~標本作製 ⑧ 翅が開くのを防ぐ その1

この問題はかなり難しいもので、ぼくもかつてベテランの方に良く質問していました。
近頃では、僕自身もいろいろな方から、熱心に質問を受けることが多々あります。

それに対するひとつの解としては、まあ、肩透かしのようなものなのですが、

おそらく核心は、、、

開く奴は開く。開かないのは開かない。

コレに尽きると感じています。

ちょっと開いちゃう標本を目にすると、どこか、よく言う「奥歯になにかが挟まってる感」ていう感じで、なんとも気持ちが悪い。

なので、あれこれと、抗ってみたいと考えるわけです。

で、あれこれやって「翅閉じた、やったー」と標本箱にしまう。

でも標本箱にいれて数日ののち、目にするのは、「なんか・・・わずかに開いてるじゃん・・・」、という事実。

そんないたちごっこ、否、無限の螺旋から解放されたとき、つまり、そんなのどうでも良くなったとき(笑)、ああ、この域に来てしまったのだな、と空を見上げてしみじみ思うのです・・・。

とまあ、冗談はさておき・・・ほんと、深刻な問題です(笑

 

対処としては、

展足時に、

① 鞘羽に隙間が生じないほどに十分に軟化して、
② 針を打つときに「鞘羽と腹部がぴったりとした状態」で打ち、
③ 脚の根本を整える針で、鞘羽を押さえつけるようにし、
④ 「腹部が鞘羽にめり込みすぎていない状態」を確認し、
⑤ 輪ゴムか糸(種類によって変える)で鞘羽を押さえつける。

です。

 

⑤に関しては、写真を参考にしてみてください。

翅先よりも、翅の付け根のほうを押さえたほうが効果的かと思います。

注意点としては、

・ 毛の多い種には「糸」を使う。
⇒ 状態の悪い標本だと、ゴムに毛がひっついて取れてしまうことがある。

・ グラキリスなど、鞘羽の薄くやわらかい種には、「糸」を使う。
⇒ さもなくば、ゴムの力では鞘羽がへこんだ状態で乾燥してしまい、まるでB品のような惨状が待ち受ける。

写真のように、欧州系からヒメミヤマ系まで、たいていは輪ゴムでOKかと思います。

 

いずれにしても、標本の〆め方が、「開くか開かないか」の大事な要件になるのは間違いないかと。

【酢酸エチル処理】ならば、まず、問題ありません。展足しだいで良質な標本が出来ます。

近年の中国・チベットの標本は、開く標本が多いです!もともと多いですけど。
なんらかの強い【アルコール】なんでしょうね。
標本が「硬く」なってしまって、外殻の中の繊維組織が乾燥すると縮む傾向が強くなるというか、とにかく、「硬く」乾燥してしまいます。

 

ともかく、翅開きを直したい際は、面倒でも、軟化からやり直すのが、トータルでみたときに結果、一番早いのかな。

アロンアルファなど瞬間接着剤を、鞘羽の下に流し込んで、無理に接着させようとするのは~おすすめしません。僕自身、いろいろやらかしてきましたから~。

プラモやガレージキットが得意で、歯科技工士のように、手先が器用な方で場数を踏んでいるならばよいのですが、本当に手馴れていないと、標本をダメにするリスクが大きいです。

*****

②と④腹部を鞘羽に「ぴったり」させる問題については、また書きたいと思います。

では。

Author: jinlabo

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