この問題はかなり難しいもので、ぼくもかつてベテランの方に良く質問していました。
近頃では、僕自身もいろいろな方から、熱心に質問を受けることが多々あります。
それに対するひとつの解としては、まあ、肩透かしのようなものなのですが、
おそらく核心は、、、
開く奴は開く。開かないのは開かない。
コレに尽きると感じています。
ちょっと開いちゃう標本を目にすると、どこか、よく言う「奥歯になにかが挟まってる感」ていう感じで、なんとも気持ちが悪い。
なので、あれこれと、抗ってみたいと考えるわけです。
で、あれこれやって「翅閉じた、やったー」と標本箱にしまう。
でも標本箱にいれて数日ののち、目にするのは、「なんか・・・わずかに開いてるじゃん・・・」、という事実。
そんないたちごっこ、否、無限の螺旋から解放されたとき、つまり、そんなのどうでも良くなったとき(笑)、ああ、この域に来てしまったのだな、と空を見上げてしみじみ思うのです・・・。
とまあ、冗談はさておき・・・ほんと、深刻な問題です(笑
対処としては、
展足時に、
① 鞘羽に隙間が生じないほどに十分に軟化して、
② 針を打つときに「鞘羽と腹部がぴったりとした状態」で打ち、
③ 脚の根本を整える針で、鞘羽を押さえつけるようにし、
④ 「腹部が鞘羽にめり込みすぎていない状態」を確認し、
⑤ 輪ゴムか糸(種類によって変える)で鞘羽を押さえつける。
です。
⑤に関しては、写真を参考にしてみてください。
翅先よりも、翅の付け根のほうを押さえたほうが効果的かと思います。
注意点としては、
・ 毛の多い種には「糸」を使う。
⇒ 状態の悪い標本だと、ゴムに毛がひっついて取れてしまうことがある。
・ グラキリスなど、鞘羽の薄くやわらかい種には、「糸」を使う。
⇒ さもなくば、ゴムの力では鞘羽がへこんだ状態で乾燥してしまい、まるでB品のような惨状が待ち受ける。
写真のように、欧州系からヒメミヤマ系まで、たいていは輪ゴムでOKかと思います。
いずれにしても、標本の〆め方が、「開くか開かないか」の大事な要件になるのは間違いないかと。
【酢酸エチル処理】ならば、まず、問題ありません。展足しだいで良質な標本が出来ます。
近年の中国・チベットの標本は、開く標本が多いです!もともと多いですけど。
なんらかの強い【アルコール】なんでしょうね。
標本が「硬く」なってしまって、外殻の中の繊維組織が乾燥すると縮む傾向が強くなるというか、とにかく、「硬く」乾燥してしまいます。
ともかく、翅開きを直したい際は、面倒でも、軟化からやり直すのが、トータルでみたときに結果、一番早いのかな。
アロンアルファなど瞬間接着剤を、鞘羽の下に流し込んで、無理に接着させようとするのは~おすすめしません。僕自身、いろいろやらかしてきましたから~。
プラモやガレージキットが得意で、歯科技工士のように、手先が器用な方で場数を踏んでいるならばよいのですが、本当に手馴れていないと、標本をダメにするリスクが大きいです。
*****
②と④腹部を鞘羽に「ぴったり」させる問題については、また書きたいと思います。
では。