これ、ある程度虫を見て触ってきた、中級者以上向きの講座です。
いろいろと問い合わせをいただいておりまして、書かないとな!という内容でした。
ブログは更新が「命」だろうと思うので、とりあえず書いちゃいます!フィードバックはのちほど。
さて、ゲニとは、ゲニタリア genitalia の略。つまり、交尾器のことです。
クワガタは、他の昆虫に比較して雌雄の差が顕著なため、オスメスの判別に手間を割くことはまったくありません。この点、オサムシなどオスメス外見が同じ種よりは敷居が低いかなと思います。
とはいえ、しかるべき先生に、正式な?ゲニの抜き方など、教わったことありません。
趣味が高じた標本づくりとして、「アマチュアな」やり方、いわばおれ流の「情熱の末に行き着いた」やり方を書きますゆえ、皆様あたたかい目で見守っていただけましたら幸いです。
さて、ここでは、【乾燥標本の場合】を見ていきたいと思います。
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(1) 軟化作業
きちんとした薬品(酢酸エチル等)を用いて〆られた標本であれば、軟化は容易です。
ゲニ抜き初心者には、きちんと処理された標本で、試みることをおすすめします。
(むしろ、生きている個体を〆て、ゲニを抜く作業は、乾燥標本のそれに比べるならば、非常に簡単。国産のコクワやノコクワで、経験値や技術を向上させるのもよいかと思います!)
中国の標本の基本アルコール〆めの標本の場合、硬く縮みがひどい場合が多いです。復元が難しい標本も少なくありません。
もっとも、生き虫落ちの腐りが入った標本はゲニも腐れ落ちている場合が多いのでここでは対象にしません。
この見極めは経験が必要です。
さて、今日のモデルは、アルナチャルのメアレーミヤマ。いい状態の乾燥標本です。
軟化前の腹部は、乾燥して縮み、腹部が上がり、羽が開いています。
お湯をどばどばかけます。
いい状態の標本であれば、本当に遠慮は要りません(笑
1~2分ほどで十分でしょう。
水を切って、腹部を確認します。(街角でもらったポケットティッシュを有効活用します。)
水分を含み、縮んだ腹部は元の位置に下がり、羽の開きもわずかになっています。
(2) ゲニ抜き
さて、ここで、ピンセットを用意します。手に馴染んだものをおすすめします。
先の鋭い、ツル首とストレートが便利かなと思います。
[#IMAGE|d0126520_10105722.jpg|201805/21/20/|mid|490|368#]
羽と腹部の間に指を入れてみます。
十分に軟化できていると簡単に開きますが、開かない場合は、もう少し軟化作業が必要となります。(腹部の先の開きに⇔加筆)
指を入れて十分にやわらかくなっていれば、尻先が、少し開きます。
この開いた隙間を、ピンセットでさらに開きます。(ここでは撮る都合上ピンセット映っていませんが・・・)
そうすると、中央に硬そうな褐色の部位が頭が見えてきます。
新鮮な標本で軟化が十分である場合、褐色の部位をピンセットで挟めば、図のように出すことができます。
経験ある方は分かると思いますが、生き虫を〆たばかりだと、腹部を圧迫すれば勝手に出てきさえもしますね!
周りの組織もごっそりいっしょに出てきますので、そのまま抜き取り、抜き取った部位はお湯に浮かべておきます。
(3) ゲニを浮かべている間に、展足
抜き取られた腹部は、ぽかんと空いていますので、元通りに閉じましょう。
その際、標本の「油分」が鞘羽の内側や腹部に白く固まってたりするので、お湯で溶かしてクリーニングをしてしまいます。
そして、展足にうつります。
このとき、容器にゲニを浮かべているのを忘れることがあるので、要注意!
たくさん展足していると、まあ、集中しすぎてある種のトランス状態にあってですね、ほんとうに忘れて、浮かべてるゲニを忘れ、お湯ごと流しに捨ててしまったりする わけです・・・(ノД`)・゚・
気づいたときには後の祭り、というような状況を乗り越え、現在に至ります。。。
(4) ゲニの整形
さて、取り出したゲニは、腹部の末節(九節目)の硬い外殻に収納されている状態です。
まずは、ゲニの外殻についている、組織を除去します。
十分に軟化できていれば、ピンセットでほぐしてゆくと、収納されていた部位、交尾器の基節 aedeagus が出てきます。
それを、根本のほうから引き出してゆきます。
このとき、出てきた基節の先にある、陰茎 Penisから伸びている細いフィラメント状の鞭部 flagellum(精管)を、ピンセットでちぎってしまわないようにしましょう。
種類によっては、非常に長い管を持っており、根本にぐるぐる巻きになって納まっているので、根本を挟んで引き抜くときに一緒に引きちぎってしまうキケンがあります。
十分に軟化していた場合、鞭部は柔らかくなっているので、「リボンを丸くするように」根本にピンセットの先を当てて優しく引っ張り出し、鞭部をすべて外側に出してから、ほぐす作業にかかるといいです。
メアレーは、この管が短いですね!画像では見えないかな。
全部を引き伸ばしたら、お湯ですすぎ、完了です。
このとき、またまた注意なのですが、先っぽの鞭部は、本当にデリケートな器官のため、すぐ乾燥します!
つまり、ティッシュなどでも引っかかったり強く触れたりすると、簡単に切れてしまいますし、折れてしまいます。気をつけましょう。
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<おわりに>
種の同定に用いるときは、たいてい基節 aedeagus のみを取り出し、基節のかたち、「側片」と呼ばれる左右の鞘状部位のかたち、そして、ペニスから伸びる鞭部の長さや形態を、比較検討します。
データとして撮り終えたら、しかるべき台紙に固定し、針刺し標本個体の下に、ラベルとともに保管しましょう。
主に先端の部位のみで比較材料としますが、交尾器を収納している部位も大事な器官ですので、両方、台紙に貼り付けて、標本と一緒に、本体の下に刺しておくことをおすすめします。
以上、非常にざっくりですが、おれ流~ゲニ抜き作業【乾燥標本編】でした。
あとあと、画像はもとより、文章表現などフィードバックしてより良い記事にしていきたいと思います。