藤田 宏
「ミヤマクワガタ大図鑑」
BE-KUWA, No.23, pp.8-23
Apr.2007
BE-KUWA (ビー・クワ) No.23
むし社(編集)/むし社
待ちに待った(?)世界のミヤマクワガタ大図鑑である。
執筆者は、むし社の藤田宏氏。
「珍品度」なるカテゴリは、買い物するときの「限定品」って感覚と似ている・・・(笑
こういう遊びは、ビギナーの愛好者の楽しみが増えて良いと思う。
まあ、実際は、生き物なのだから、一旦生息場所が分かれば、それなりにたくさんいるのだろうけど、人目にあまり触れることの無いレアなものは、みな興味ありますもんね。
今回気になったポイントを、以下に挙げる。
① L. cyclommatoidesが、L. formosusにまとめられた。
ラオスのシェンカンが基産地であるLucanus formosus。
ラオス側で採れるcyclommatoidesと思しき個体は、ベトナム・サパのものと違いは無いと判断を下した結果である。
私見をのべるならば、ラオスのものは、違うような印象をうけている。
ラオスの個体は、ベトナムのものに比べ、
・微毛が少なく、黄色さが際立っている
・顎の湾曲がゆるい
・顎先の開きが少し大きい、などなど。
こうした微妙なニュアンスレベルの違いで、同じとするか違うものとするかは、むずかしいところだとも思う。
ちなみに、尊敬する葛信彦氏の論文(月刊むしno. 378, Aug.2002, pp.2-14)においては、
sp. cyclommatoides “ホソアカミヤマ”として、和名付きで、掲載されている。
ごちゃごちゃになるので、キクロマトイデスであろうが、フォルモサスになろうが、和名の「ホソアカミヤマ」は存続させるほうがいいかと思っている。
② L. kraatziとして図示された個体
これは、イタリアのZilioli氏が記載したsp. brivioiではないだろうか?
頭部の張り出しの扁平感、微毛が無い、内歯の形状などの特徴から、sp. kraatzi とは全く別と思われる。
③ L. sericeusなど、「亜種が多い種」のプレートが少なかった点。
紙面の都合上といういいわけは、悲しいな~~~是非とも図示してもらいたかった。