Beetles World 11 ~ベトナム産マラッツィオルムミヤマの記録

Beetles World 11_2015. July

 


Vietnam, Yenbai

pp.12-20

“Contribution to the knowledge of the Lucanidae– fauna of Vietnam.”
「べトナム産クワガタムシ相に関する知見の追加」

T-Q Nguyen, K-D Schenk, Q-V Nguyen

 

【p.18, Fig.10】に、べトナム産マラッツィオルム♂♀ペア L. marazziorum pair from Vietnam が図示されました。

データは、2015年6-7月の「サパ」。
ラオスに産する本種の、べトナムにおける「初」記録、とのこと。

 

特徴としては、

「いくらか短く、しっかりした大顎を持ち、♀はより黒い

have somewhat shorter and stouter mandibles and the females are much darker, nearly black.」

と記述されています。

 

*****

私見。

いまだから言えることですけど~(笑

 

実は、この記事の2年前、2013年秋に、プロ仲間の協力を得て、自分はこのべトナム産の個体群を記載しようと「ゆっくり急いで」準備を進めていました。

そして、しかるべきところに投稿して、さあ! というところで。

しかし、一向にレスポンスが無く・・・
あれですよ、会員であるけれども、一般参加の完全な部外者なので、読んでもらえなかったわけです。

「誰々先生の門下」とか、所属のツテがあったわけではなかったので。

 

で、査読により、リジェクト rejected (掲載不可)!!

修正要求もありましたが、それにそのまま応じていたら本が書けてしまう時間を要するレベルの要求。

もちろん理解します。それをやれば非の打ち所の無い論文になることは。

ただ、種の「記載」ですから・・・図鑑作るわけではないのです・・・。

あんまりの扱いに~~~(以下自粛)

 

そして「修正稿」を提出することなく、なにか方法はないかな~と考えていました。

 

そんなどたばた劇など知るよしも無く、シェンク氏らは、それから2シーズン後の2015年夏に、「べトナムでの初記録」という体裁で、記したわけであります。

ま、(自分が)勇み足にならなくて良かったかな。結果オーライ!と今となっては思いますけどね。

 

てことで、もったいないので、ここに「2013年時点でのボツ論文のべトナム産のプレート」を貼っときます!(黒字強調・笑!)

 

Plate2(Dec, 2013

In my rejected description about L. marazziorum in Vietnam, ^^;;



当初、サパのデータと混同されていましたが、主たる採集地はまちがいなくサパより南方の「イェンバイ YenBai prov.」です。

なので、シェンクの記録のデータもあやしいです

 

 

特徴としては、

 

● ラオス産よりもパッと見、総体的にスレンダー
ラオス産は概して「胸部」が太く、「腹部」と幅が変わらないくらいで、フォルムが「寸胴」に見える。
ただ体長にかんしては、ベトナム産が大型だとかはなく、ほぼ同等ですね。

● 大顎が、とくに顎先がラオス産のごつい感じに比べ、べトナム産は鋭いかたちをみせます。
また、巨大な内歯がラオス産に比べて、「前方を向き気味」に鋭く発現する個体が多い。

● 触覚片状部が4~6節で、ゆらいでいる!
ラオス産にも出ますが、それは数えるくらい。(詳細なデータはここでは出さないでおきます。)
上のプレートだと、No.7・9・10の個体を参照。5節、6節になっています。
⇒ このような変異は、ギリシアにおけるヨーロッパミヤマsp. cervusに見られるようなもので、興味深い特徴といえますね!

● シェンクが言う「♀はより黒い」というのは、単に「油分」でしょう!
⇒ アセトンにつければ、ふつうに赤い状態にもどります。本当に。

● ゲニを見て、当時は違うかな~と思っていましたが、「個体差」を思えば、同種の範囲内だな~と、今では思うようにしてます。
⇒ タイ産のツカモト sp.tsukamotoi がラオス産と同じ、といったレベルといいましょうか。

 

以上、シェンク氏らの記述を受けて、ごくごく簡単にですが~「じつは結構早く見つかってたんだよ~べトナム産のマラッツィオルム」について、でした。

 

では。

Special Thanks:

Author: jinlabo

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