“シセンミヤマ”について

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最近このブログを通して繋がりました同志の方々よりいろいろと質問を受けるので、まとめを記しておきたいと思います。

 

最初に、「シセンミヤマ」と呼ばれていた、主に中国の四川省から得られていたヒメミヤマ系の種群についての、アップデートされた概要です。

 

ご存知のように、これまでこの種群に対して、とりわけ日本の研究者のあいだでは、以下の学名があてられてきました。

Lucanus szetschuanicus Hanus, 1932

 

旧大図鑑(1994)をはじめとして、西山氏(2000, p.72)Be-kuwaの藤田氏(2007, p.19)2010年の藤田氏の新大図鑑(Text p.99 /Plate. 42)といった、日本におけるクワガタムシの知識普及に多大な影響を与えてきた著作において、同様の学名があてられています。

しかし、じつは、一部の人たちのあいだでは、「シセンって違うんじゃない?」とひそかに言われ続けていました・・・。

決定的だったのは、2001/2003年に出版された、チェコのKrajcik氏による学名カタログ集の一枚のイメージです。

その2003年の巻末のプレート(Plate.6, fig.17)に、プラハにあるLucanus szetschuanicus Hanus,1932のシンタイプ標本が図示されたのですが、なんとそれは、われわれが「シセンミヤマ」と認識していた種とは異なっていたのです。

※シンタイプ (syntype)とは
等価基準標本。原記載時にホロタイプが指定されなかった場合、その論文中で引用された全ての標本はシンタイプとなる (ICBN13 9.4)。また、タイプとして同時に複数の標本が指定された場合、それらはホロタイプではなくシンタイプとなる (ICBN13 9.4)

(スマホで失礼)

まさに百聞は一見にしかず。

養老先生のいつものことばを借りるならば、「見ればわかる」。

つまり、図示されていた種は、われわれがイタリアのZilioli氏によって記載され「ヒルデガルド」として認識していた種でした。(ヒルデガルドの原記載、後日UPします)

*****

こうした認識は、『中華鍬甲・壱』(2010)を著したHuang氏らによって、ようやく訂正を試みられることとなります。

本書では、pp.68-75までの8ページもの十分な分量を、この分類に割いています。

詳しく知りたい方は、ここを参照してください。

かんたんにまとめますと、Lucanus szetschuanicus Hanus, 1932は、これまで「ヒルデガルド」とされていた種の本来の名と結論付けられます。

つまり、Lucanus hildegardae Zilioli, 2002という名はシノニムに降格、事実上消滅しました。

そして、Huang氏らは同著中で、原記載の挿絵との比較や特徴を精査し、Lucanus fairmairei Planet, 1897が、元来「シセンミヤマ」の名だ、と結論付けています。

*****
ついでにプラネットによるLucanus fairmairei Planet, 1897の原記載を載せておきますね。

出典はこちら。https://www.biodiversitylibrary.org/item/39579#page/17/mode/1up
今はこうして文献をWEBで読める時代です。図書館のレファレンスに依頼し、コピーを海外から取り寄せる時代は終わりました・・・。

原記載のイメージを参照しても、この分類については、自分は異議はありません。この理解に則って以後分類されてゆけばいいと思います。


Lucanus szetschuanicus
Hanus, 1932  ヒルデガルドミヤマ(←便宜上この名前の認識で。sp. chironになっても、コーカサスと呼ぶような感じ。)
syn. Lucanus hildegardae Zilioli, 2002


Lucanus fairmairei
Planet, 1897 シセンミヤマ

あてられる学名が入れ替えられたとしても、長い間使われてだいぶ馴染んだ感のある“シセンミヤマ”という「和名」が変わらないのは、個人的には良かったかなって思っています。「和名」の良さって、こういうところにあるのかなと思ったり。(まあ、四川じゃないところにもいるんですけどね~)

 

以上、“シセンミヤマ”をめぐる、学名の変更問題でした。

 

 

 

おいおい!

まだだろ!?

そう思った人、あなたはまぎれもなく、深山マニアです(笑

そう、まだ解決していません。

これまでLucanus fairmairei Planet, 1897の名があてられ、 「フェアメール」と呼ばれていたミヤマは、どうなったの???という問題が残っているという事実。

旧大図鑑(1994)はおいておいても、Be-kuwaの藤田氏(2007, p.21),前田氏(2014, p.9)、なによりも新大図鑑(2010, Text p.99/Plate.42)において、取り上げられている種群です。

こいつらは何者??

これについては~

長くなるので、また回を改めて書きたいと思います!

では。

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